頼りない胸のうすさが
カルアミルクのうすさにかさなる
甘いものを摂るたびに
からだが花に近づいていることに気づく
春になる
そとから聞こえてくる声が変わる
庭を横切る黒い猫が
はいている白い靴下を
自分が編んだもののように思う
春になる
声をかける前に手で触れると
突然君の骨に触れてしまうことは
よろこばしい記憶としてある
風がもたらすあわい寒さのように
春になる
咲かずに落ちるだろうなと思いながら
摘んできたつぼみを瓶にさす
からだは台所に置かれているが
本当はだれ一人ここにはいない
眠らないの