散歩日和 / 志邑 左記

洗濯物が飛ばされて
ぼくはしぶしぶ家を出た
裏の駐車場に落ちたTシャツは洗う前より汚れている
砂っぽいそれをたたきながら
ぼくはコンビニへ行ったけれど
ほんとうに手ぶらで出てきたのを忘れていた
部屋へもどると不在着信が二度
そのあとにひとつメッセージが来ていた

つよい風に逆らうように
歩いているとき春だと思う
さっきひろったTシャツを着て
今度は新発売のコーヒーをちゃんと買った
飲んですぐ店の前のゴミ箱に捨てた
帰り道には三歩で渡れる橋がある
ぼくが投げた携帯電話は
汚い放物線を描いて落ちてった
すぐ浅い川の底にあたって
画面は一度光って消えた