silent letter / 穂高 遊

いつの間にやらここに居たのか
樟脳のにおいが染みついた
古いあかずの箪笥の中には
むかしむかしの酸素と闇と
記憶の破片がしまわれていて
何にもなれない何かの瞳が
ちがう世界へ旅立つその日を
夢見ているとか
いないとか