虚像 / 穂高 遊

彼女の美しい指先は震えていた
わたしは彼女を安心させたくて
できるだけ優しく微笑んでみせた
どうやら上手くはいかなかった
彼女は頬を僅かに引き攣らせただけ

彼女はわたしでありわたしは彼女になる
同じラインストーンが煌めいている
彼女の指先は美しく
わたしの指先も美しいのだから
同じディープブルーが艶めいている
何も心配することなどない
彼女はわたしでありわたしは彼女になる
魔法の呪文を唱えても
彼女の美しい指先は震えていた

わたしは彼女を安心させたくて
この肌に思い切り爪を立てた